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本屋大賞

第四回本屋大賞をいただきました。
ここを見るような方は皆さんご存知だと思いますが、全国の書店員さんたちの投票によって
選ばれる、その年で「一番売りたい本」という、とてつもなく嬉しい、すごい賞です。
五日に発表式があり、外苑前の明治記念館に行きました。
たいていの文学賞の場合、受賞者の発表後に日をおいて授賞式があるものですが、
本屋大賞はその場で結果を発表し、授賞するというイベントで、少し特殊です。
受賞のお知らせ自体は、ずっと前に聞いていました。
実は、吉川英治文学新人賞受賞の記者会見のホテルで聞いたもので、
一日に二つの大きな賞をいただいたということで、脳みそ的にも感情的にも容量オーバーで
嬉しさと同時になんだかわからない~~~状態でした。
「極秘」扱いだったので、もちろん、ここにも書けませんでしたし、なぜか皆知っている業界の
人々以外にはなるべくしゃべらないようにしていました。

児童文学のほうでは賞をいただいたことがありますが、小説の授賞式は初めてでした。
とにかく何かしゃべらないかんというのがありまして、受賞のスピーチですね、数日前くらいから
気になってはいるのだけど、じゃ、草稿を作ろうかということはなく(MOEでデビューの時は確か
予行演習しました)、言いたいことは本の雑誌の別冊の受賞の言葉に書いたし
困ったなと思いつつ、バタバタと当日になってしまいました。
取材が二つ入っていたので、かなり早く明治記念館に行きました。
講談社の担当さんは、なんと、ここで結婚披露宴を行ったとのこと。ご縁がありましたか(笑)
芝生の庭園のきれいなシックな建物です。私は散歩ついでにお茶に来たことがあります。
取材を済ませて、発表式の会場に行くと、実行委員のスタッフの方々がきびきびと
動き回り、リハーサルを始めていました。
壇上には、書店員さんたちの手作りポップ(書店の売り場で本のお薦め文を書いて立てておく
ものです)がぞろりと並び、「一瞬の風になれ」の三冊の表紙の巨大なものが……。
その眺めだけで、「本屋大賞だな!!」と思いました。
まさに、書店からつながっている手作りの賞……という感じがしました。
ここでトロフィーを受け取り、ここでスピーチをし、ここで花束を受け取り、
一度下に下りてから記念撮影をして……など、とても細かく本番の指示を受けます。
だんだん緊張してきます。
少し時間があったので、下の喫茶店でお茶をして、おなかがすいていたのでBLTサンドを
食べたのですが、これは正解でした。
どうでもいい話ですが、前に路傍の石文学賞をいただいた時、何も口に入れずに(そんな暇がない)
喉をうるおすために適当にお酒を飲み続けていたら、翌日に強烈な二日酔いになった
笑えない思い出があります(^^; 今日は隙を見つけて絶対に食う!と決めていました。

控え室で呼ばれるのを待ちます。
母と娘を呼んでいたので、壇上に上がった時に目が合ったりしたらアガるだろうなとぼんやり
考えていました。物書きをしている「佐藤」と、それ以外の日常の「私」と、スイッチを
切り替えるようにして暮らしているので(このブログは合体しちゃってますが)
こんな大舞台でいきなり「日常」に引き戻されたらえらいこっちゃと思うわけです。
時間に遅れることが伝説化しているリリー・フランキーさんがちゃんと到着されているという
知らせを受け、式が始まった様子。
呼ばれて、調理場のようなところを通って壇上の裏に行きます。
椅子に座ると、なななんと、そこから見える会場の前の端に母がいて、ニコニコして手を
振っています。あちゃー。でも、なぜか、それでアガるというより逆に落ち着きました。
そこから先は記憶が曖昧です。
任務遂行! という感じです。
暗い会場に、とにかくとにかくとにかく人がいっっっっぱいいるなーというのだけは、
しっかり見えました。
何かを取り落とすこともなく、コケることもなく、絶句することもなく、壇上を無事に終えます。
リリー・フランキーさんから花束をいただけるのが、すごいなーと思います。
また、上にあがり、書店員さんたちと一緒に記念撮影。なんだか不思議な気持ちでした。
嬉しいというより、なんだかフワフワしてしまってる感じ。
私は自分が物事の中心にいるのが落ち着かないタイプなのです。
写真は端っこで映りたいほうなのです。ド真ん中じゃないですか。

歓談タイムになり、多くの書店員さんたち、お祝いに来てくださった編集さんたちとお話しました。
青森や広島や京都から、はるばる、このために来てくださった書店員さんたちもいらっしゃいました。
一人ひとりとお話できる時間が短くて、私はうなずいたり、ありがとうございますと頭を下げたり、
笑ったり、そんなことしかできなかったのですが、改めて、一次投票93票、二次投票192票を
いただいた重み、その数以上のこめられた熱い気持ちをずっしりと感じました。
やはり、生の言葉、生の表情、生の人々に触れることができるのは、すごいことです。
この場に来られて本当に良かったです。
ノミネートされた作家さんが何人か見えていて、私も賞を取れなくても、この発表式には来ようと
決めていたので、やはり、良い場、良い賞だなとつくづく思いました。
得票数は同じだったライバル?????の森見登美彦さんも京都から見えていて、
「夜は短し歩けよ乙女」をとても面白く読ませていただいたのでお話したかったのですが、
この場合、こちらから声をかけていいものかわからなかったので遠慮しました。
またの機会があると嬉しいです。

二次会は青山一丁目のお店で、実はよく知っているところでした。
ここで、だいぶ、ゆっくりと、書店員さんたちとお話しすることができました。
来ていただいた方々と、本当にホットな「一瞬の風になれ」トークをしました。
嬉しい言葉をたくさんたくさんいただきました。
会場に飾られていた手作りポップをいただけたので後日娘と一緒に読んだのですが、
これは宝物です。
ゴチャゴチャ書きましたが、何かこれで伝わるでしょうか。
物書きがそんなこと言ってはいけませんが、なかなか、伝えきれないように思います。
賞には色々な側面があります。名誉、効果、etc。
本屋大賞は、特に位置づけの独特な賞です。
どんどん大きく育っていき(既にすごく大きいですが)、年々変化していくかもしれない賞です。
でも、やはり、この本を書いて、読者の方の熱いメッセージが嬉しかったのと同じく、
書店員さんたちの熱いメッセージが嬉しかったことを一番に記憶に留めておきたいと思います。

ちなみに、二次会には、王様のブランチでお世話になった松田さんが来てくださって、
一番にご挨拶をいただきました。松田さんの暖かい笑顔を見ると、本当に嬉しくなります。
それから、まったくの偶然で、別の集まりで、そのお店にいらした北上次郎さんも
合流してくださり、「一瞬」を一番始めにどんとプッシュしてくださった北上さんに
偶然にお会いできるということに、この本の持っている強烈な運のようなものを
感じました。嬉しかったです。

本屋大賞のスタッフの皆様、応援してくださった書店員の皆様、本当にどうもありがとうございました。


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